好きな書嫌ひな書

二月六日(木)晴、寒し
家から最寄の驛近くに自轉車駐輪場があり、其の建物の壁面がギヤラリーのやうにちよつとした展示が硝子越しに出來るやうになつてゐる。絵畫であつたり人形だつたり、ドライフラワーだつたりと、週替りくらゐで様々な素人作品が展示される。今週は子どもの書作品が飾られてゐる。手本を見て臨書する習字ではなく、思ひのままに書かせたタイプのものである。私の大嫌ひなあいだみつお風なものもあつて顔を背けたくなるものもあるが、中に「ともだちいつぱい」という作品は元気があつて樂しさうで好ましく思つたのだが、其の少し先に「僕がんばつているよ」といふのがあつて、此れは文面も字も全く嫌な感じのものであつた。何といふか、自己愛と自己満足と他者の眼への諂ひを感じさせる、氣持ちの悪い文言であるし、字にも素直さがない。これはもう、こんなものを書かせて展示する指導者が悪いのに決まつてゐる。子どもなら何をやつても赦されるといふ訳ではないのである。ちやんと古典の臨書をさせるべきで、学校書道は問題が多いにせよ、せめて書道教室であるならば古典をみつちり学ばせるべきであらう。そこからはみ出してでも表現したいと思ふ子どもは指導しなくてもきつとやるのではないか。