天國から地獄

五月十五日(金)晴
夏場に温泉に入ると夜に體が熱くなり過ぎて夜中布団をはいでしまひ、結果として朝冷えて風邪を引くことが多い。今囘も似た感じの朝になつたが、兎に角急ぎ家に戻らねばならない。八時過ぎしんちやんの店に寄つて挨拶をして歸りは箱根新道経由だが十一時少し過ぎに家に着いた。晝食の後電車で都内に出る。得意先に向かつたのである。二時より打合せに臨み余の香料が落選したことを知らされる。有力視されてゐただけに一緒に行つた同僚一同茫然自失、肩を落として引き下がる。落胆の色を隠せず皆言葉少なの反省會を驛前の喫茶店で開き、余は東京驛より新幹線で京都に向かふ。車中やけ酒めいた麦酒を飲み眠つて京都驛前のホテルに投宿。夕飯も驛ビルで済ませ、何をする氣にもなれずに早々に寝に就く。