小川商店街

七月九日(木)雨
小川が真ん中を流れる商店街である。買ひ物客で賑はふ中私は時々小川に足を入れて濡らしながら歩いてゐる。ところどころ川幅が廣くなつて魚が見える。鮎のやうで、私も釣つてみたいと思ふが、釣竿も持つてゐないし、そもそも釣りをしたこともないことに気付く。見ると釣り人が何本も竿を川に入れてゐる。それらが自動で動くやうになつてゐるのである。私にはとても出來さうになく、諦めてアパートに戻ると、ドアを開けた途端に會社の若い女の子がやつて來た。普段あまり喋つたことのない子だつたので驚くが、まあ入つてと中に入れる。いつもは無口でどちらかと言へば無愛想な方なのだが、心なしか上氣したやうにも見え、コートを貰つたから見せに來たと言ふ。赤と黒のストライプのコートで彼女には派手過ぎると思つたら、はにかみながらそれを私にくれると言ふのだ。これは出來ると確信したところで目が覚めた。