断片

十月十一日(火)陰時々晴
家でたまたま前の妻が忘れて行った小冊子を見つけ、畳の上に寝転がりながらぱらぱらめくってみる。すると前妻の実家であるS家のことがいろいろ書かれている。私も知っている前妻の兄について、子供のころ神童と言われ、前世の記憶について詳しく語っていたと近所のおばさんが言っていたらしい。真偽を確かめようと確認しに行くと、私は直接聞いた訳ではなくその子の伯父にあたる人から聞いた話であると言う。そこで小冊子を書いた人(おそらく前妻)が疎遠になっていたその伯父にコンタクトをとって会うことになった。伯父は約束の日に何気なく駅に行くと掲示板に「アキラ、先に行く」とあったのを見て慌てて駅員に今日は何日だと聞く。駅員が日付を答えると、約束の日であったのを思い出したのか驚愕の表情を浮かべると同時に胸を押さえて倒れ込み、そのまま息絶えたというのである。伯父には会見の目的は伝えていなかったという。これを読んでわたしは震えがとまらず、家内を呼んで読むように言う。家内は読んで驚いた様子だが、それが前妻の家についてのものであることを見破って、「これMさんのでしょ」とわたしをにらむのである。家内は前妻の旧姓を知らないはずなのに、すぐにそれと気づいたことでわたしの恐怖はさらに強まり、激しく震えるのであった。

信号待ちをしていると、赤信号なのに何台かの車が続けて私の車を追い越して行った。信号が青になるのを待ってそれらを追いかける。いつの間にか運転しているのは私服の警官で、車は覆面パトカーであることがわかる。警官はある時点で本気になったらしく、雨で濡れた急カーブの続く坂道を猛スピードで先行する車を追いかけて行く。それに煽られた形で前の車もスピードを上げるが、一台は減速して路肩に停車し、もう一台は曲がりきれずに砂地にコースアウトするが無事であった。見ると乗っているのは若い男女である。警官が追いかけたお陰でこの程度の事故で済み、その結果今日の幸せな家庭を築けたということらしい。カメラは夫婦となった二人の新居に入って行くと母親となった女性の方が胸も露わに授乳をしている。いいのかな?という思いでわたしも近づいていくと驚いたことに下も何もつけておらずに丸見えである。さすがに、おっと目を逸らすと、近くにいた三歳くらいのお兄ちゃんが、妹はここから出て来たんだ、きれいでしょと、もっとよく見るように促す。見ると確かに陰部はピンク色にテカっているが、何よりその大きさに驚かされる。その驚いた私を、さっきまで乳を吸っていた女の子が十三歳くらいに成長して、少女マンガのような大きな瞳で見つめるので、何ともきまりの悪い思いがして、両親が若かった頃の話をすべきかどうか迷うのである。