三冊の本

六月十二日(月)晴
駅を降りたところで橋本さんに出会い、ともに学校までの道を歩く。橋本さんが「あれは読んだかね」と聞くので、そう言えば彼誰同人で前回会った際に同人の推薦する三冊の本を読んだ上でどれが一番面白いか決めるという宿題があったことを思い出す。すっかり忘れていて、まだどの本も買ってもいない。会社に着くと机に小包が三つあり、開けると問題の三冊の本なのであった。安藤さんが送ってくれたものに違いないと思う。先日ロマン堂の人に三冊の本の話をしたから、ロマン堂から頼まれたものであろう。安藤さんにとってロマン堂は顧客になるのかと家内に尋ねるとそうだという。安藤さんはいい人だと私は言う。それから三冊の中の一冊を取り出して読み始める。何かの実験で巨大な蟻が出来てしまう話なのだが、高さ20メートル、全長は40メートルはあろうかという、黒い重戦車のような巨大な蟻が通りに現われた。私は目を合わせると殺されると思い、通りに停めてあったワゴン車のかげに隠れる。黒々として鋼鉄のようにしか見えないその姿は、とにかくでかくて恐ろしい。ところが、私はこうした生物への対抗上人間がものすごい腕力を持つに至ったことを悟り、通りの人々にそのことを告げる。そして、それを証明するために通りの車を次々と持ち上げるのであった。