寺酒寺

六月十八日(日)陰後晴
和歌山駅から電車で二駅、紀三井寺で降り、その名の寺を参詣。かなり急な坂を登って本堂前に辿り着く。想像していたよりこじんまりとした寺なれど、落ち着いた雰囲気で特に和歌の浦を望む眺めは素晴らしい。帰りは正規のルートで階段を降り楼門を通って駅に戻る。再び電車で海南に行き、タクシーにて温故伝承館に赴く。此処は名手酒造の旧精米蔵を利用した酒蔵の展示館也。酒造に用いられる道具だけでなく、明治期の玩具や教科書の類いの展示もあり、面白く見る。其れから通りの反対側にある黒牛茶屋に入り、伝承館入場料について来る利き酒二点セットを飲む。即ち此処は余が贔屓にしている日本酒銘柄黒牛の蔵元なのである。黒牛の名が入ったTシャツと前掛け、それに純米酒黒牛のミニチュア瓶を購う。アテに出された蔵元製の奈良漬も旨かったので買おうかと思ったが重くなるのと、いくら何でも金の遣い過ぎだと自重。黒江の町を少し見てから徒歩海南に戻る。途中寂れたシャッター商店街の小道を歩き、昭和の面影が色濃く残っているので思わず白黒で写真を撮る。何となく懐かしさを感じる町並みである。海南駅から何とか間に合った電車に乗り御坊に到る。駅前の宿に荷を預け昼食を取ろうとするが、駅付近には目ぼしい店がなく、やむなくホテル一階のカフェでランチを食べ、電車で道成寺駅まで移動。そこから歩いて道成寺へ。今回の目的のひとつである。境内を一巡の後拝観料を払うと中に通され、そこで安珍清姫の絵巻物で絵解き物語をしてくれる。知っている話ではあるが面白く聞く。その後新しい本堂で仏像を拝観。来た時は団体客がいて賑やかだった境内も今は閑散としている。土産物屋が並ぶ門前の通りをそのまま真っ直ぐ進んで日高川まで歩く。謡曲、歌舞伎、長唄地歌等で知られた道成寺だが、私が親しいのは新内「日高川」なので見ておきたかったのである。川幅は広いが水量はさほど広くない。後で聞けば、水害がもとで上流にダムが出来て水量が減ったものらしい。余にとっては平家物語宇治川とともに長いこと見てみたい川だったが、宇治川ほどの感動はなし。そう言えば余は結構「川見」が好きなのかも知れない。歴史の中で名の出てくる川を結構わざわざ見に行くことも多い。それから30分ほど歩いてホテルに戻る。途中から陽が出て暑くなり日傘を持って出たのは正解であった。流石に疲れてホテルの部屋で午睡をし、夜コンビニで弁当を買って食べ、十時には就寝。