呉式

六月二十五日(日)雨後陰
外房の海は雨に煙っていた。五十六度目の誕生日を私は千葉の千倉で迎えた。M倶楽部の例會が昨日から行われていた為である。今回は太極拳の沈師今井師を迎え、体を動かすセッションが多かったが、いつもながら多くの刺激を得た二日間であった。松岡さんの体調もだいぶ回復されたようで何よりである。千倉で思い出すのは、親が常々語る「千倉の階段落ち」の逸話である。私がおそらく二歳か三歳くらいの頃、夏の海水浴に千倉の旅館だか民宿だかに泊まった時のことである。階段の上から、何かのはずみに幼少の私が転がり落ちたのだそうである。その私をたまたま階下を通りかかった宿の人がうまい具合に受け止めた。一同安堵して笑い声でも洩れたのであろう。すると、私は何が気に喰わないのか、階段を昇って行き、もう一度落ち直したというのである。一同呆気にとられて今度は受け止める暇もなかったという。依怙地ということばがぴったりする、可愛げのない行動であり、三つ子の魂百までではないが、その後のひねくれた人生を暗示する出来事であった。