憧れの欧州航路

三月二十二日(木)雨後陰
和田博文著『海の上の世界地図―欧州航路紀行史』(岩波書店、2015)読了。幕末以来、ヨーロッパに渡航した者たちの紀行文は多く、その足跡を追った研究や書物も少なくない。それでいて、実際に欧州に行くまでの航路や船舶の歴史を含めた「航路紀行史」は今までほとんどなかったように思う。各時代による船旅の内容や状況の変化や、船客の視線の変容を細かく追った本書は、その意味でも便利な一冊である。断片的に知っていたことは多いが、通史的にまとめられると総合的な視点というか、理解の尺度が与えられるからである。船上で演説会や句会、すきやきパーティなどが開かれていたことや、船内の設備のあらましなども良い情報であった。