雅楽の宴

十月二十九日(金)晴
昼間得意先を廻り五時前ホテルに戻る。軽装に換へてから近くの天神橋商店街を歩む。庶民的大阪的なアーケード街なるも古本屋多く、目当ての天牛書店他を覗く。森茉莉「贅沢貧乏」350円、唐木順三「日本の心」100円を購ふ。其の儘梅田まで往き、六時半よりうめだ芸術劇場にて天王寺雅楽部「雅亮会」の雅楽舞楽を観る。九月に訪れし四天王寺の、説経節信徳丸にも縁のある伝統の雅楽にて、偶々此の会あるを知り予め券を求めしものなり。演目は、

  • 第一部 管絃 盤渉調音取 越天楽 蘇莫者破
  • 第二部 舞楽 振鉾 白濱 採桑老 承和楽 退出音声 長慶子 也。

此の秋は神楽、尺八、能・狂言雅楽と日本の伝統芸能を鑑賞する事多し。雅楽は初めて観る物なれば物珍しさはあるも、総じて退屈な物也。源氏物語絵巻にある青海波の様子など見ても余り面白さうに思へずにゐたが、本物を見て其の印象の過たざるを知る。かうしたものを面白いと見た往時の日本人の感性を想像する便とする他はなし。又演奏始まりたる後も私語を止めぬ紳士婦人多く、大阪たる所以か些か空いた口の塞がらざる思ひあり。