東博と一如庵

一月十六日(日)十時に東京国立博物館に入る。まず表慶館にてインド彫刻と中国美術を観る。図書の画像と異なり近くで見入れば自ずと仔細に観察する事を得て発見も多し。ガンダーラ佛像始め書籍にて得た知識の実見にもなり、休みの日に行ける範囲で斯くの如き展示あるは幸ひといふべし。又、中国青銅器や古鏡の文様模様の美しさや意匠に富む面白さ、或いは白磁青磁の純粋な美しさを楽しむ。
更に法隆寺宝物館に往く。今まで行きたいと思ひながら本館を観て廻るだけで疲れ果てる事が多く、初めての訪館なり。地方に乱立する美術館より遥かに端正でモダンなデザインの建物に入るや、其れは正に「たからもの」の館であつた。
特に二十六の金銅菩薩像が各々シヨーケースに収まり程良い明りに浮かび上るフロアは圧巻で、佛像の個性とでもいふべきものを自分の好みと併せ見て歩く事が出来る。正に古代のAKB48の如きものにて、総選挙ならぬ観世音菩薩像の人気投票をやつたら面白いだらうと思ふ。又金工荘厳具の精巧さと美しさは息を呑む程にて、東洋の美の様々な有様を堪能して昼過ぎ博物館を後にす。
昼食の後早稲田に向ひ、如道会例会に参加。一如庵の床の間には昨年末池大雅水墨画が掛けられてありしが、新春に掛け替へられ、宗達の犬の絵と為る。安田靫彦の旧蔵といふ。早速拝見するに東博の続きに在るが如き心地す。
二時開会し倶に新年を賀す。又、今年の演奏会スケジユールも既に決まり、気持ちも新たに流し鈴慕、松風を全員で吹奏。其の後各自が吹き、余は布袋軒鈴慕を吹く。其の後新年会となり美味の料理で酒宴となる。余にとりて午後の食事は三日ぶりなれば滋味が染み渡る心地す。六時半散会となり、一如庵を辞して佐田先輩を筆頭に七名ばかり場所を居酒屋に移して飲む。尺八談義は尽きざるも明日は平日なれば八時半散会となり帰宅す。帰宅後入浴して就寝。寒き一日也。