香料の話題

パーリ語による上座部經典、所謂原始佛典である長部經典を第一經から読み始めた。もちろん原文ではなく翻訳だが、それでも直接釈迦の説法を聞くやうな喜びを感じるから不思議である。仏教史を少し齧つた後では大乗佛教の經典を佛陀の教へとはなかなか素直に思へなくなることもあるのだらう。
第一經は梵網經と呼ばれ、前半は戒について説かれてゐる。其処に避けるべき無益無用な話題が列挙されてゐて、中に「香料の話」といふものがあつた。其の少し前には沙門ゴータマは香料を塗飾することから離れてゐることが語られる。
わたしはこの教へに基づき、今後は香料に関する無益な話題を此のブログに載せることは控へやうと思ふ。この香りはかうである、あの香りはさうでないなどと話題にすることを止めやうと思ふのである。わたしがこれまで仕事としてしてきた事が無益であることがよくわかつた。香料会社を辞するべき時機も近づいてゐるのかも知れぬ。
いや、恐らく「香」其のものの無益までは説かれてゐないであらう。香は淫しない限りに於いては心を清浄にし、明晰な思惟をもたらし、煩悩を滅することも出来て悟りへのお供にもなるはずのものだからである。香は功徳もあり、香りを作るわたしの仕事も黙々と勤める限りは無益とは言へないだらう。ただ、香料を話題にした無駄話をすることは慎むべきなのである。と言ふか、考へてみると会社でも殆ど香料の話題などしてゐないやうな気もするのであるが。