カタカナノヒビキ

日経新聞の連載「私の履歴書」は今画家の安野光雅である。其の中で安野が戦後間もない頃のある出来事を書いてゐる。バス停でバスを待つてゐる時に「バスキタカ」と話しかけてきた朝鮮人の老女に、安野が片言の朝鮮語で返事をすると喜んで、「ヒトリダマリノミチナガイ、フタリハナシノミチミジカイ」と言つたといふのである。話し相手が出来てよかつたといふことだらうが、安野も言ふやうに実に美しい言葉だと思ふ。