夏の夜・朝

六月二十四日(金)晴
昨夜は窓を開け放したまま寝入つたせゐか、暑いといふよりは丁度よい気温でよく眠れ、明け方は寒さを感じた程であつた。寝室は一階だが構はず窓を開けて寝るし、玄関も鍵を掛けない。強盗が入るとも思へないし、万が一入つたら差し違へれば丁度いいといふ気持ちがある。むしろ、脳梗塞か何かで倒れて助けや救急車を呼んだのに鍵が掛つてゐて入れない方が心配だ。無頓着なのか小心なのかよく分からないが、さうしたればこそ去年の夏もクーラーなしで過ごせたのである。
今朝は此の夏初めて一枚しか持つてゐない半そでのワイシヤツを着て出勤。上着を着ないのも二度目だが、風があるせゐかさほど暑くは感じず丁度よい。駅から会社まで歩けばそれなりに熱くはなるが、まあ何とかなる程度である。職場はわりに冷房が効いてゐたし、帰りにはわたしにとつて一番凌ぎやすいくらゐの気候になつてゐた。寒い頃と比べたら今は安楽とでもいふべき季節である。歳とともに寒さ嫌いは益々強くなるもののやうだ。
日の長い此の時期の夕暮れも捨て難い味があり、夕映への空を水面に映したいたち川を眺めながら家に戻る際には、意味もなく幸せだとさへ思ふのである。もちろん、さうして帰る家にみどりさんが待つてくれてゐたら何よりだつたのだらうが、今は望むべくもなく、季節の肌さはりを僅かに幸福の糧にして毎日を送つてゐる。