野毛のバー

七月二十二日(金)陰寒し
仕事を終へ桜木町に向かひ、野毛に飲む。一軒目は戦後の匂ひがそのまま残る「バラ荘」といふバー。日活の映画に出てきさうな雰囲気のカウンターでスコツチを飲み、其れからアブサントを飲ませるバーにはしご。同行した仏蘭西から帰任したばかりの友人が向かふでアブサントとそれを飲む酒器の収集に嵌まり、偶々野毛を歩いてゐてこのバーの姉妹店に入つて教へて貰つた店だといふ。成程たくさんアブサントが置いてあり、女性のバーテンダーも中々詳しいやうだ。わたしは一杯だけで自重。それでも相当に酔ふ。
男五十にしてようやく、どう見ても地方都市の場末のさびれた飲食街にしか見えない野毛の街をうろついても、それなりに似合ふ年恰好になつたやうだ。
昼間から涼しい一日で、長袖のシヤツを着てゐても帰りは寒いほどであつた。十一時半就寝。