漆、香、文楽

二月十二日(日)晴後陰
早起きして夫婦共に着物を着して九時前家を出で、十時半前水道橋プリズムホールに赴き、開催中のいしかわ伝統工芸フエアを見る。出展の中にN子がかつて取材で知り合ひ交際の今に続く夫妻の営む輪島塗の老舗あり。行きて挨拶を交すに結婚祝ひとて輪島塗の箸を頂戴す。厚意に対し深謝に堪へず。会場には漆塗り始め各種伝統工芸の出店あり。矢張り漆器の棗、香合などに素晴らしきもの多く目を引くが、其の高額にさらに目を大きく見開かざるを得ず。とても購ひ得る額にあらず。ただ目を楽しむるのみ。僅かに二俣てふ和紙の便箋等を購ふのみにて会場を後にし、途中蕎麦屋にて昼食を取り神保町界隈の古本屋を何軒か覗いてから地下鉄にて明治神宮前に移り、徒歩妙喜庵に往く。二時より香道稽古と香席。梅花香にて、正に梅の香を思はせる香組に驚く。其の後再び明治神宮から地下鉄を乗り継ぎ半蔵門に至り、駅近くの喫茶店にて小憩の後六時半より国立劇場小劇場にて文楽二月公演を観劇。出し物は「菅原伝授手習鑑」と「日本振袖始」也。菅原の筋立ての巧妙さと、振袖の舞や音曲の面白さと趣向も異なる演目を楽しむ。ところが幕が引けて帰途に就くに、着物に薄き角袖の薄着なればにや寒きこと尋常ならず、また喉も千切れむばかりに痛む。帰宅十時半を過ぎ、急ぎ就寝するも悪寒止まず寒きこと限りなし。喉の痛みも耐へ難きものあり。