酒と退職

三月十四日(水)晴
昨夜大阪の島田商店より一升瓶二本届く。言ふまでもなくKさんからのものである。一本は北雪大吟醸黒ラベル。もう一本は意外にも月桂冠大吟醸「伝匠」といふ酒であつた。今日帰宅後大和樂、松風二回、普大寺虚空、三谷清攬、調べ・下り葉、布袋軒鈴慕を吹き、其の後鶏鍋を食して「伝匠」を冷で呑む。鍋に合ひ旨い。今までどうしても大手酒造は、熱燗用の菊正宗ピンを除けば敬遠してゐたのだが、これは行ける。雑味がなく流石に洗練された飲み口である。暫く楽しめさうである。
今日はまたアマゾンより本が届いた。「トコトンやさしいにおいとかおりの本」と『新日本古典文学大系 江談抄・中外抄・富家語』といふ全くジヤンルを異にする二冊である。さらに、N子の知人から能の観世宗家の書いた本が送られて来た。その知人は結婚祝ひに観世流の能のチケツトを呉れるといふ。有難い話である。N子は退職の日が近づいて送別の食事会などが続いてゐるやうだ。さう言へば先日余は便箋に筆ペンで辞職届なるものを生まれて初めて書いた。勿論N子の代筆なのだが、今時こんなものを出すのはテレビドラマくらゐかと思つてゐたらさうでもないらしい。考へてみると辞職などしたことがないから分からないのだが、余の務める会社であれば口頭で済むのではないか。辞めて行つた人たちとは付合ひがないから確かめる手立てはないのだが。