彼誰観桜会

四月八日(日)晴
十時半起床。午前中先日京都で購ひし色紙掛けを探すも見つからず。さうかうするうち一時前来客あり。彼誰同人のF氏とO氏の二人也。すぐに折畳み椅子などを持ちて近くのいたち川辺に移り、花見の宴を始む。晴れて陽光降り注ぐも風強く思ひの他寒し。ビールで乾杯し、暫くしてN子が料理とビールの追加を持ち来る。両氏は余の高校時代の後輩にて、文藝部の仲間として卒業後は『彼誰(かはたれ)』なる同人批評誌を倶にし、以後彼誰同人としての付き合ひは三十年余に及ぶ。年に二三回集まりて談笑するを愉しみと為す。時事問題、演芸界の話から文藝部時代の思ひ出話や、文学映画音楽等の話題百出するも、いつしか彼誰の支柱であり我が畏友にして超人的な博識と読書量を誇るH氏の話になるのもをかし。
三時過ぎ風も更に冷たくなりぬれば拙宅に移動し珈琲を飲みつつ談笑を続け、五時過ぎ二人は去る。O氏は長野、F氏は野田までの遠路なれば止む無し。夏の再会を約して見送る。昼間の歓談の中で、O氏の子息が来年中学受験とて、余の「心願成就」の色紙を所望さる。今年N子の甥の中学受験に際して此の四文字を書いて贈りたるところ、無事合格の効験あるを聞きつけて望むもの也。親心の切なるを思ひ快諾す。受験はまだもう少し先のことなれば、其れまでに満足の行く字を書きたきもの也。