桜、三谷、三味線

四月七日(土)晴
七時半起床。九時家を出で十一時より一如庵にて尺八稽古。大和樂、布袋軒三谷を吹いた後、先生の二尺一寸管を拝借して初めて越後三谷に入る。難しいが名曲であり、まともに吹けるやう精進したい。正午前辞して早稲田駅に戻り、N子と合流し神田川を越えて徒歩永青文庫に至る。まず隣接する新江戸川公園、即ち細川家下屋敷庭園の桜の木の下にてN子持参の握り飯等入る弁当箱を広げて昼食。其の後永青文庫細川忠興と香木、蒔絵香道具』展を観る。暫く休館してゐた後の、今日が再開初日であるせゐか、結構客が多い。香木『白菊』の他豪華で優美な香道具の数々を見る。江戸後期の蒔絵や金工の妙は香道具に於いて其の極致に達したかの感あり。
再び神田川まで降り、満開の桜を眺めつつ川沿ひから江戸川公園を抜け江戸川橋に至る。花見客の往来多く、また花の下蓆を広げ飲食をなす酔客も数多あり。日差しは暖かなれど日蔭は寒く風は冷たし。

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神田川沿ひの桜
江戸川橋より地下鉄で麹町に行き、徒歩紀尾井町ホールに赴く。既に二時を過ぎたるも一時より松永会の演奏会が小ホールにて開かれ、K先生の奥方も出演とて切符を準備されたれば出向くもの也。丁度休憩時間にてK先生を見かけ礼と挨拶を陳ぶ。程なく再開。長唄の会にて杵屋系の曲目、『助六』『賤機帯』『角兵衛獅子』『勧進帳』を聴く。元々歌舞伎に興味のなき余にとりては馴染みの薄き音曲なればにや、直に睡気を催し気持ち良く眠るも『勧進帳』は構成に変化もあり面白く聞く。同じ三味線ながら矢張り聞きなれた地歌の三味線や先日の本條秀太郎さんの端唄とは響きも音味も違ふ。改めて日本の音曲に関心を強くするは事実也。
四時過ぎ終演となり、清水谷公園に立ち寄り大久保公哀悼碑や池辺の桜を見た後、弁慶橋を渡り赤坂見附から地下鉄で渋谷に出で、東横線で横浜に戻る。高島屋にて余の枕を購ひ、更に甥に中学への入学祝ひとしてウオーターマンの万年筆を購ひて帰る。帰宅後越後三谷独習。


清水谷公園三景