日々澹澹

四月六日(金)陰
過ぎ去つた日々の鮮明な記憶が突然蘇ることがある。喜びの記憶、あんなに嬉しかつたことはないといふ思ひ、其れが失はれて二度と戻らぬことへの哀惜と悔恨。渦巻く川の流れの中でからうじて立ち尽くしてゐるやうな、心細さとやる瀬なさを覚える。それでも、流さてしまはぬやう、歯を喰ひ縛つて足を踏ん張るより他はない。滔々たる時の流れに対抗するのでなく、ただ澹澹とやり過ごすのみ。行く川の流れは絶へずして而ももとの水にあらず。今年は方丈記成立八〇〇周年とのことである。
帰宅後、大和樂、松風、調べ・下り葉、布袋軒三谷、普大寺虚空、門付けと鉢返しを吹く。