初夏の繁茂

五月七日(月)晴
出張に出たまま連休に入つたのでしばらく会社に出ず、今朝久しぶりに通勤路を歩くと、此の十日ばかりの間に樹木の葉は生ひ茂り、道端の草花や雑草の背が伸びて、あたり全体が色濃いみどりの景色になつてゐる。花の咲いてゐるあひだは木々の梢の合間の後ろに広がつてゐた空が今は見えず、其れが木の葉の詰まつた密度を感じさせるのであらう。植物の成長の早さと生命力にはいつも驚かされる。若葉や新芽はあたたかい陽光のもとすくすくと育つてゐるのであらう。同様に、溌剌とした若さに溢れる女の子たちも、春になつて生育が加速するのであらうか、道ですれ違ひ駅や電車で見かける女子高生のスカートが今までより短いものに見える。此の短い間に背丈が伸び脚も長くなつてスカートの下に覗く生足の露出が大きくなってスカートの丈が短くなつたやうに感じるのではないかと推測するのだが、如何であらうか。いずれにせよ、連休後半のすつきりしない雨模様の天気の後、やつと心地よい気候となつた喜びとともに、さうした植物と人との生命力や若々しさを胸いつぱいに吸い込むと、かへつて心は満たされたやうな静かな気持ちになつて來る、菫山老人五十の初夏である。