優良図書

七月二日(月)
日中頭痛あり。昼休み節電の為照明を消した暗い職場の窓辺に移つて原稿用紙にこの日乘を万年筆で認む。定時退社。帰宅後N子に原稿を渡し尺八稽古中にデータ化してもらふのがここ数日の日課となつてゐる。此の日土曜に続き竹の調子良く、大和樂、松風、越後三谷、普大寺虚空、無住心曲、流し鈴慕に瀧落を吹く。夕食後此の日アマゾンより届きし内田樹著『先生はえらい』と橋本治著『ちやんと話すための敬語の本』(共にちくまプリマー新書)読了。此れは甥のH起君に薦めるべき本を捜してゐて見つけた二冊にて、まづは自分で読むことにしたもの也。元より著者の二人は現代の日本において余が最も敬意と信頼を寄せる書き手の中の二人なるが、二冊とも予想・期待通りの良書にて推薦に価す。特に橋本著は敬語を通じて人との距離の取り方や人との関はり方を十代の少年少女に教へ、少しでも生きる上での知恵を身につけてもらひたいといふ思ひに満ちた好著である。内田著はいつもの教育論が聞けるものと思つてゐたのとは違って、学ぶといふことや考へるといふことの根源を示唆してくれるものにて、面白く読む。十代の頃に此れを読んでゐたら、余も少しは違つた生き方育ち方が出來たかも知れぬと思ふ。内田先生の著述は今までネット上のものが中心であったが、これを機に書物の形のものも読んでみやうと思ふ。同じシリーズの、松岡正剛先生の『多読術』もこの間読み了へ、今はN子が読んでゐる。此方は中一には少し難しいかもしれないが、とりあへずこの三冊をH起君に贈るつもりである。『多読術』中にもあるやうに、本を贈られれば嬉しいものだし、余のやうな者でも青少年の読書の導き手になれるのであれば、それはそれで嬉しい限りである。