荷風と書棚 

九月十三日(木)晴
夏と変はらぬ暑さである。昨日より神先生が面白いと仰つてゐた加藤郁乎著『俳人荷風』を讀み始む。手練れの文章の妙味と俳味が渾然として味はひ深し。書中に引く巌谷小波の『私の今昔物語』と日夏耿之介の『荷風文學』も讀んでみたくなりネットで調べ早速注文す。またすでに、荷風の『冬の縄』の入る「荷風随筆第五巻」も注文済みである。余は岩波から出てゐる此の「荷風随筆」の一巻から四巻まで持つてゐるのだが、『俳人荷風』で採り上げられた「冬の縄」が五巻に入つてゐると知り慌てて購ふ事にしたのである。荷風や耿之介を新字新仮名で讀む程味氣ないものはないから、『荷風文學』にしても、平凡社ライブラリーに入つてはゐるが、昭和二十五年刊の初版を求めた。最近はアマゾンで、本の値段より送料の方が高い文庫の古本ばかり買つてゐたので、今回の三冊は久しぶりに高い買ひ物である。
昨日飄眇亭に置く書棚が届いたので、此の日は會社を二時間早く早退し、五時から二時間半をかけて、組立て・本の整理を終へる。幅九〇センチ高さ七〇センチで、スライド書棚の上に置いた。結局文庫二段と新書版一段の計三段にしかならないが、これによりハードカバーの本などを入れる余裕が些し出來た。もつとも最近は購入する本の十中八・九は文庫版か新書版であるが。いづれにせよ書斎で殘るスペースはあと僅かであり、此の調子で本が増えると來年中には飽和状態になりさうである。