虹 

九月十八日(火)晴時々雨
日中何度か驟雨あり。ざあーつと降つてすぐに止み、その後日が照るといふ目まぐるしさである。何度目かの雨の後青空が広がるのに氣附き急ぎ外階段に出てみた。期待通り東の空に巨大な虹が掛かつてゐる。ほぼ半円で、上の方は多少霞んでゐるが、両端の地上に近い辺りはくつきりと七色の光が輝いてゐる。三時半を回つたくらゐの頃のことである。虹について余は特別な思ひ出があるが今は記さない。久しぶりに見る虹は鉛色の雲を背景としてゐてもなほ美しい。十分程で南側の端は見えなくなつたが、北側は陽が差してわりと太い色の帯をはるか先の建物の上に輝かせてゐる。暫く見てから職場に戻る。他には誰も氣の附いた者はなかつたやうだ。余も誰にも告げずに何喰はぬ顔をしてゐた。
     窓辺よりとび出してみる虹のそら −乞子
 …世に窓際族なることばもあれば。