不調 

十一月十九日(月)晴
定時退社し病院に寄らんと急ぎ歸るも途中で戝布を会社に忘れて來た事に氣付き、取りに戻つた為通院を斷念。歸宅後竹を吹くも鳴らず。余の所持せる一尺八寸管は竹楊銘三ツ判で大學一年の時求めしものなれば既に三十余年を経る。中々難しき竹にて鳴る時は驚く程良く音が出て氣持ち良く吹けるも、鳴らない時は又極端に音が出にくくなるもの也。特に寒くなつて管が冷えてゐると持ち味の柔らかい音色が出ず、硬く細い音が出るのみにて吹いてゐて氣持ちが萎える程にて、此の日は正に是に當る。從つて氣分乘らざれば早々に切り上げ平政の刺身を肴に北雪を少々呑む。食事の後讀書。入浴後就寝。此の日家人の叔母より宅急便届く。余の好物糠鰊中に在り。嬉しき事限り無し。電話にて禮を陳ぶ。左肩は痛み、正座をなせば足の親指も痛む。寝返りを要せざる寝方にして久しく、一晩中仰向けなるにも慣れたり。此の寝方の利点は翌朝髪型の乱れが最小限たる事である。