巴里行

七月二十五日(木)陰後晴
ルフトハンザでベルリン経由で巴里に行くことになつた。家人と一緒だが、義母や函館の伯母も同じ飛行機に乘つてゐる。余はバスタオルを腰に捲いただけで下着をつけて來なかつたことを悔やんでゐる。飛行機は離陸するがいつの間にか街中を走行してゐて、こんな狭い角を曲がるのかと驚かせながら進む。やつと高速道路に出たので此処で飛び立つのだらうと思つてゐるとバスに追ひ抜かれる始末。もともとベルリンでの乘り換へ時間が少ないので預けた荷物がきちんと届かない可能性があり、さうするとバスタオルのまま會社に行かねばならぬと思ひ余は街に下着を買ひに出る。浴衣を着た若い二人の男がゐて、ひとりには彼氏がゐるがもうひとりはイケメン好みなので中々見つからないなどと話をしてゐる。いい加減飛び立つだらうと飛行機に戻ると、まだ街中のビルの間を超低空飛行を續けてゐた。
飛行機が街中を走つたり、驚く程低空でビルの合間を抜けて飛ぶといふ夢はたまに見るのである。墜落を目撃する夢も多いが、とにかく中々飛び立たずに一般道をビルや車をかすめて進むといふ夢が一番多い。後は乘り遅れさうになつて慌ててゐるのに航空券が見つからなかつたり、パスポート審査で時間がかかつたりパスポートを忘れたりといふのも見る。初めて海外旅行に出掛ける前の緊張や心配がいまだに殘響として記憶に留まつてゐるのであらうか。さうさう、ルフトハンザの座席の前ポケツトには水彩画セツトがあつて、成程此れで絵でも描いてゐれば暇つぶしになつて良いサービスだと感心したものの、よく見ると使ふと後から請求される仕組みでがつかりしたのも覚えてゐる。