帽子

九月十四日(土)陰時々晴
家人と一緒に友人のT教授の家に行こうとしている。T氏の家はリゾートホテルの一室ということで、家人と私は手分けして探すことにする。地下に降りていくと、何度か夢の中で行ったことのある温泉の大浴場があり、こちらではないとすぐに分かったので地上に出て、そう言えば携帯に住所が入っていたかもしれないと思い出して見てみると202号室とある。廊下の案内板を見るとその番号だけ飛んでいる。どういうことだろうと思って外を見ると、離れの建物が目に入った。そちらに進んでいくと、平屋の和風建築で、戸を開けはなった和室に蒲団が敷いてあってちょうどT夫妻が起き出したところのようであった。私は早すぎたかなと思いながらも外から会釈すると、奥さんが気づいて玄関の外にデッキチェアのようなものを二つ出してくれ、私はT氏とそこに腰掛けて、場所がわかったので家人に携帯電話で連絡を入れる。すると私の白いパナマ帽が風に飛ばされてある家の庭の芝生の上に落ちたのだが、その家の主婦が二階から見ていて、懐紙で包まなくては取ってはいけないというので、懐紙の用意もないからそのままにしてあると言う。私は怒って、こんな風の強い日にそのままにしていたら飛んで行ってなくなってしまうではないかと怒鳴り、この辺の地理に詳しいT氏をせきたてて探しに行く。こんなに思いっきり走ったことは久しぶりだと思いながら、意外に速く走って行く。それでもT氏の方が速くて5-6メートルは先に行き、いつしかはぐれてひとりきりになってしまった。そして、帽子を探し続けてもう三年になるという実感がある。郊外にある大学のキャンパスのようなところに入り込み、中庭に走り降りたら叫び声をあげて中年男性が現れたが私を認めると何かぶつぶつ言いながらいなくなった。その後に着物を着て眼鏡をかけた神経質そうな中年女性がやって来たので、ああ逢引の約束でもしていてこの女と勘違いしたのだなと気づく。私はその女性と何かしゃべるが、道を教えてくれたらしく、その通りに進むと学生らしい二人組が店のようなものをやっていて、そこにたくさん帽子が置いてあり、現にひとりは帽子を作成中である。私はここなら何とかなるかも知れないと思い、白いパナマ帽をなくしてしまったのだが、見つけてくれないかと頼む。すると何とかしましょうと言ってくれる。私はほっとしながら、家人に対して怒りすぎたことを後悔し始めている。