棚と茶杓

十月六日(日)陰後晴
午前中急に思い立って車で家人と久しぶりに遊行寺骨董市に行く。出店がこの前の鶴岡八幡宮の骨董市よりも少なかった。大江戸も開催の日なのでそちらに流れたか。家人が気に入った茶杓、供筒と箱の二重で銘「秋の聲」と「野あそび」を買う。それだけであっさり帰る。午後は嶺庵の掃除から始めて茶道具一式を出す。風炉先、土風炉、筒釜、吉野棚、摸安南の水指、溜め塗りの建水、瓢箪型蓋置に武蔵野蒔絵の棗、水注ぎなど、とにかく大変な量で、押入れから取り出すだけでも大変である。茶碗は長次郎写しの黒樂。茶杓は手に入れたばかりの秋の聲。吉野棚を使った総飾りの点前を三度練習。棚や水指は岳母から借りたものだが、我ながら今回の道具の取り合わせは悪くないと思う。十四日の茶話会がますます楽しみである。思いのほか気温が高かったので浴衣で稽古をした。浴衣ももう最後だろうと思っているが、暦ではもう袷の季節だから、考えてみると驚くべき気候かも知れない。茶道具片付けの後嶺庵で引き続き尺八を吹き、米芾の臨書を楽しむうち夕飯となる。明日締切の原稿を昨日仕上げたのでゆったりとした休日となった。夕食後は風呂に入るまで、届いたばかりの『意身伝心』を読むことにしよう。言うまでもなく、松岡先生と田中泯さんの対談録である。