車内熟讀社内紛擾

十一月十九日(火)天晴

朝出勤せんとて驛に赴くに人身事故にて電車プラツトフオームに停り居れり。余座を占めて讀書すること一時間余、遂に電車動く。其の間に小中陽太郎著『翔べよ源内』を讀了す。同書は此の夏にM先生に薦められしものにて、風來山人平賀源内の一生を描く小説也。會話文にやや拙き処あるも、伏線や趣向、其の時代の事件や文物の深讀みの解釈含め、面白く讀む。續けて前田愛著『成島柳北』を讀む。電車遅延を是幸ひと讀書に費やすも亦一興也。

社内にて問題續出。外資の競合他社が既に構築せし国際間對應のシステムに相當する程度のイントラネツト上諸ソフトウエア整備を「グローバル化」と言ひ換へて正當化し、其れのみが目的化してシステムの不備から來る混乱を等閑視する一部の管理職一派の暴挙、看過すべからざるもの有り。また、此の會社本來の仕事である調合香料の処方作成を為す余等が現場で頻繁に起こる不具合やシステムの脆弱性を指摘しても、都度修正すれば問題なし、システムに不備不具合はつき物也と嘯(うそぶ)くIT(アイテー)担當なる者の言ひ様には唖然として開いた(アイター)口が塞がらず。竟に調香師はシステム構築の為の試験運用、不具合報告の協力要員と成り下がりぬ。驚くべし。驚くべし。