有松の師

十一月二十日(水)晴
此の日竹田耕三先生の訃報に接す。有松絞りの老舗竹田嘉兵衛商店當主にして絞りと藍染の作家としても高名な方にて、余は一昨年の夏家人の紹介にて有松の御邸を訪ね知己を得たり。物静かながら優しく気さくな方にて多忙の中半日お付合ひくださり、由緒ある竹田家住宅及び茶室等を案内して戴いた上に晝食のみならず晩餐までご馳走になり、色々お話を聞きし事昨日の事の如くに思ひ出さる。悲嘆に堪へず。其の後賀状書簡の往來はあるも竟に再會の機會を得ず。痛恨也。家人も沈痛ひとかたならず。先生戰後の生れなれば七十に達せず癌にて逝く。悲しむべし。