小説

一月十五日(水)陰
紅葉全集第五巻より昨夜から今夜にかけて『紫』『浮木丸』『冷熱』の諸篇を讀み了はる。會話の妙は芝居か落語でも聞くやうで、地の文の名調子は正に江戸戯作の真髄に達す。荒唐無稽と通俗性が行儀好く並んでしかも讀んでゐて面白い。紋切型の人物造形も徹すれば個性とならう。實に愛すべき小説たちである。