ドツキリ

三月十一日(火)晴
五歳の娘に銀行頭取の御曹司が求婚したら親はどうするかといふドツキリ番組である。冒頭松方弘樹がその御曹司の顔に似せた大きな人形を殴りつけるところから番組は始まる。暗転してカメラは地下通路から地上に上がる階段脇へと移る。東映ヤクザ映画の中のやうな、薄汚れて野獣じみた松方が片隅に蹲つてゐる。其の前を、まづ年老いた頭取が通り、それから何人かがわざとらしく通り過ぎてから、一目でそれと分かる若くて二枚目の御曹司が取り巻きとともに階段を上がつて行く。余は松方を促し階段を上らせると、途中から取り巻きがコートや上着を脱いで階段に広げて、松方への花道のやうにしてゐる。照れくささうにそれらを踏んで地上に出ると御曹司が松方を迎へ、恭しく一室へと導く。御曹司はシークレツトブーツを履いて背を高く見せてゐることに余は気づく。御曹司は松方の五歳になる娘と、結婚を前提としたお付き合ひを申し出て、さてどんな反応をするのだらうと思つてゐたら目が覚めてしまつた。