温泉

七月二十四日(木)
未詳倶楽部で温泉に來てゐる。松岡さんもゐるし、知つた貌もちらほら見えるのに何事もなく夜になり余はそのまま寝てしまふ。翌朝宴会場のやうな広間に硯や筆があるのを見つけ、例の集ひがあつたことを知り後悔する。やがてやつとゲストと松岡さんが登場する。ゲストは何と吉瀬美智子であつた。しかも吉瀬は丸坊主なのである。それでも美しい人は美しいのだなと思ふ。彼女はバリ島の温泉の話を長々と續けるのだが其れが一向に面白くない。さう思つて見てゐたら吉瀬の顔がいつの間にか毛むくじゃらになつた上に、どう見ても男の顔になつてゐる。ますます白けた氣分になり余は独り浴場に赴くのだが、風呂には湯が踝の辺りまでしかなく、余は其の少ない湯を手で掬つては肩に掛けるといふ有様であつた。