眼福

八月朔日(金)晴後雨
會社を休み午前通院。午後家人と上野の國立博物館に赴く。台北故宮博物院「神品至宝」展を觀る。汝窯青磁王羲之徽宗帝の書と進んで、割と直ぐに蔡襄以下の宋の大家の書に至る。黄庭堅の三点に到つて足が止まる。草書花氣詩帖頁は辺りを払ふ品格あり。又麝香、沈香や甲香等を原料とする嬰香の調合処方を書きつけた一帖も何氣無さの中に味はひあり。更に、現在余が毎朝臨書に勤しむ処の「行書苦筍賦頁」が出展されてゐたのは感激であつた。矢張り「本物」の墨の跡は印刷とは違ふのである。其れから米芾に進み、また別格の筆致を樂しむ。其の後も元・清の文物を觀る事二時間余、本館に移り一階近代で是眞や大觀を見た後二階に上り第八室にて等伯の瀟湘八景図屏風や蕭白、玉堂を見る。更に東洋館に移り、第五室にて官窯青磁の名品を見る。常盤山文庫所蔵の米色青磁瓶を見て初めて黄色味を帯びた青磁の美しさを知る。其の後第八室にて趙之謙の書畫と北魏の書を見る。趙之謙の書も惡くないが、何と其処にも米芾の草書四帖が展示されてゐて、此方は水平展示なので上からじつくりと眺められるし、他に人もゐないので本當にゆつくり鑑賞する事が出來た。「墨」といふ雑誌の最新号が丁度米芾を特集してをり、其の中で詳しく取り上げられた作品だつただけに、改めて本物と對面して感激一入であつた。四時間があつといふ間に過ぎてしまつたが、實に満足感のある鑑賞であつた。