痴的知識人

一月二十四日(土)陰
岳母の社中の初釜に出る。出席者中に某三流和光大学準教授なる女性あり。抑々約の時間に遅れること一時間余なるも謝罪の言葉もなく、會席料理の量多しとて文句を言ふ。更に驚くべきは來たりし時着物を何と左前にて着る。嗤ふべく驚くべく、何とも言ひやうのない御仁也。ネツト上にて着物を安く求め、着付けもネツトの仕込みにて、俄かに日本文化に目覚めたか茶道を習はうと思つたのであらう。点前稽古に於いても師たる岳母の注意を喜ばず書籍やネツトにて自ら得た知識を優先するといふ非常識、言語道断と言ひつべし。昨今斯くの如き人散見す。和の心を知らずして表面のみ倣はうとして滑稽至極に陥る者尠からず。和の習ひ事は何であれ師の教へは絶對であり、批判するのであれば去るのがよからう。嘗ては余もさうした因襲を忌避したることもありたるが、ものを習はんとすれば謙虚たるべきは當然の事にて、此の御仁など大學での教育の程度も推して知るべしであらう。新年を賀して集まり文字通りの和敬を以て爲すべき初釜の席に、同席の一期一會も解さず思ひ遣りにも欠け、極めて不愉快なる知識人もあつたものである。