アメ車

二月十二日(木)晴
會社の人間二拾人くらゐと一緒に飛行機に乘つてゐる。しかも余は進行方向と逆向きの座席である。傍に同期で人事部長をしてゐるIが座つてゐて両脇が空いてゐるので客はゐないのかと訊くとゐるといふ。Iの座席はよく見るとパイプ椅子であつた。巴里に向かつてゐるのだが、着いたら移動はバスか何かをきちんと手配してあるのだらうかと誰かと話してゐた。やがて巴里に着き、既に余はマレー地区のカルナバレ博物館にゐる。其処に有名な女性作家で高齢の○さん(誰だかよくわからない)がゐて、余が話しかけると此処は氣に入つて來るのは二度目だといふ。それならクリユニユー博物館もお好きではないですか。リルケの『マルテの手記』に出てくる一角獣のタピストリーのある處です。よかつたらご案内しますといふ。ところがリルケは好きでないと○さんが言ふので、それならこの近くのユーゴーの家に行きませうと言つて、中庭にゐた○さんを連れて外に出ると、○さんの息子といふ中年の男性が大きなアメ車で待つてゐたので、それに乘る。運轉席の後ろに座席が二列あり、○さんは一番後ろ、余と家人は真ん中に乘つてゐる。危なつかしい運轉で何処に行くのだらうかと思つてゐた。