配管と拉麺

七月二十四日(金)晴後陰
中國にゐる。坂の多いところで、ツアーの一員として皆の後をついて廻るのだが、家の門だとか公園のブランコや道路標識といつた、指定されたものに触らなくてはならないので結構疲れるのである。しかも私が一番上手に素早くタツチ出來るのでいつの間にかリーダー格にさせられる始末である。廣い通りの交差点に出て、前を見ると既に一囘來たことのある通りであることに気付く。もう一周廻らねばならないのである。やがて工事現場のやうな處に入り込み、壁に沿つて長さ一メートル、直径二十糎程のパイプを取り付けることになった。壁にはところどころ洗面所の鏡のやうなものがあつて、それを上に持ち上げて下にパイプを通すと固定される。ところがさうして固定されたパイプとパイプの間に隙間が出來るので配管の用を足さないのである。實に杜撰な工事だと思つてゐると、どうやらパイプ間を筒状の布でジヨイントしていくつもりらしい。しかも、その作業は我々旅行客にはやらせないと言ふ。憤慨しつつ宿に戻ると途轍もなく汚い處で、皆其処で出される食事は食べたくないと言ふ。そのうちに機轉のきくものが裏庭から出た先の店で拉麺を買つて來た。容れ物こそカツプ麺の容器だつたり辯當を入れるプラスチツク容器だつたりと見映えは悪いが味はまづまづだと言ふ。私もそれにしようと皆に續いて行くと厨房だけがあつて家族らしい四五人か立ち働き、好みに合はせて野菜とか焼豚をトツピングしてくれるのである。私も幾つか選んで載せて貰ひ持ち歸つて食べ始めるのだか、肝心の麺が思ひの他尠くてがつかりしてゐる。