九月四日(金)晴

昨日の夕暮れは牛の鳴き声を聞き、今朝は鶏の鳴き声で目覚める。フランス人の好みそうな田舎暮らしである。六時頃起き出して草地を降りてロバに会いに行く。待っているとやって来る。おとなしくて人なつこく、癒やされる生きものである。荷物をまとめ、朝食を食べて出発前になってネットのプロバイダー業者が来た。中々繋がらないことが多いらしく呼んだのだが、はた目にも埒が開きそうにない。見かねたニコラ君が駅まで送ってくれることになった。K夫妻に篤く御礼を言ってから、ニコラ君の運転でラクライエットという駅に送ってくれた。車好きのニコラ君はさすがに飛ばして早く着いたので、近くの城館に連れて行ってもらう。小ぶりだが、西洋の童話などに出てくる「お城」そのものといった感じの城である。青空を背に撮った写真は絵のように美しい。それから駅に行きニコラ君と別れて十時半の列車に乗ってリヨンに向かう。
リヨンでは駅前に宿を取ったので、まず荷物を置いてから、地下鉄の1日乗車券を買ってベル・クール広場に行く。それから旧市街を歩き、遅めの昼食をとり、レピュブリック広場から美術館方面に歩く。途中永井荷風が勤めた横浜正金銀行リヨン支店のあった建物を見に行く。さらにクロワルスに上るが眺めはそれほど良くなく、暑い中歩き回ったせいで疲れて気持ちも悪くなって来た。何とか荷風の住んでいた辺りを見た後私はホテルに戻って休み、家内は駅近くのショッピングセンターを見に行った。休んだが気持ち悪いのは直らずに、リヨンでの食事を楽しみにしていた家内には申し訳ないことながら、何も食べないことを選択して早めに寝る。家内はやむなくパンをテイクアウトして部屋で食べた。