九月五日(土)晴

朝六時起きで準備を整え目の前のリヨン・パールデユ駅に行き、朝食を買ってから7時2分発のTGVでカンヌに向かう。ここでも途中から乗って来たイタリア人女性の香水が強すぎて胃がムカムカして来る。私は強い匂いに弱いのである。
カンヌに着いて音を頼りにピアノのあるところに辿り着くと、グラースの香料会社に勤めるKさんが迎えてくれた。Kさんとは私がパリで調香師の研修を終えた後のグラース旅行で初めてお会いしているから、三十年近いおつきあいである。しばらく交流がなかったものの、最近楠香のことを調べる中でまたメールのやりとりなどするようになったのである。Kさんの車でカンヌの目抜き通りを回った後グラースに向かう。帰りの便を考えて一度グラースの駅に行き時刻表を貰うなど、いつも通りのKさんの親切には感謝のしようもない。市街の車で回れる香料関係の旧跡を見たあと旧市街の中心に近いホテルまで送ってもらい、チェックインの後1時に再び待ち合わせて広場のレストランで昼食をともにする。楠香のことやグラースの現状について話す。
食事を終え、広場からも近い通りにある、楠香が暮らしていた建物を見る。建物自体は決して豪華ではないが、ディジョンと同じく旧市街の中心から近い立地であり、そこに楠香の一貫した姿勢を感じる気がした。それから、楠香が働いた香料会社まで当時楠香が辿ったで有ろう道筋に沿って歩く。当時スランという香料会社のあった場所は今小学校になっていた。写真を撮って広場近くに戻り、用事のあるKさんとはそこで別れ、後は2人で店や街並みを見て回った。グラースは3度目だが、旧市街を歩くのは初めてで、小さいがなるほど魅力のある町だと知った。体調の悪かったせいもあるが、2度目のリヨンにさほど魅力を感じなかったのに対し、こちらはすっかり気に入ってしまった。店に並ぶ品々も魅力的で、明日は日曜で店が閉まるということもあり、土産物含めたくさん買い物をして夜になった。昼しっかり食べたため、余り腹も空かずパンを買ってホテルで食べて夕食とした。