アルプスのおじさん

9月10日(木)晴時々雨
インターラーケンウエストからオストに移動し、コインロッカーにスーツケース類を預ける。7フランで2つのスーツケースの他に鞄なども入れられる大きなロッカーを使えたので、これはスイスで唯一日本やフランスに比べても安いと思えるものであった。ここからユングフラウ方面に向かう登山鉄道に乗るのだが、駅周辺にはとにかく中国人が多いので驚く。韓国人の団体も多い。アルプス観光は東洋人に人気が高いらしい。中継点のグリンデルワルドまで行き、晴れて眩しいのでまずは帽子を買う。ユングフラウの頂上に登るのは、とてつもなくお金がかかる上家人は既に行ったことがあると言うので止め、フィルスト展望台までロープウェイで登り、そこから湖まで歩くことにした。急な斜面の牧草地を眼下にカウベルの音が長閑に響く中ゴンドラはグングンと登って行く。途中一度止まり、宙ぶらりんになったりもしながら、20分程かけて展望台に着くと、空は暗く雨が降り出しており、その上寒いのでまずは展望台横のカフェでコーヒーを飲みながら様子を見ることにした。店内は同じことを考えた観光客で満杯である。しばらくして雨が上がったようで、まずは展望台に出て景色を眺め写真を撮る。崖から張り出して床が透明になった展望台は以前テレビか何かで見たことがあるが、高所恐怖症ではない私でも足のすくむ思いがする。
晴れ間も見え出したので目的の湖に向かって歩き始めたが、天気が目まぐるしく変わって、素晴らしい眺望が開けたと思うとすぐに暗雲が立ちこめたりする。30分程歩いたところで雨が降り始め、しかも行く先にはより黒い雲に覆われているので、引き返すことにした。再び展望台横のカフェに戻り、何もかもが高いので2人でひとつのスープだけ買って温かいものを口にしながら、持参したサンドイッチを食べる。晴れていたら湖を眺めながら食べようと思っていたものである。アルプスの景色は確かに綺麗ではあるが、そこに居るとすぐに見飽きるのではないかと思う。もともとスイスという国が好きではなかったせいもあるが、物価の信じられないような高さを目のあたりにして、もうこれで充分という気分になってきた。そう思ったら急いで次の目的地に行くにしくはない。ロープウェイに飛び乗り、接続よく登山列車にもすぐに乗れてインターラーケン・オストに戻り、バーゼルに向かう。ただ寝るだけの場所にするつもりだったが、そうなれば早く行って街並みも見てみたい。割と混んだ列車でバーゼルに移動し、ホテルに荷物を置いて旧市街に出掛ける。市内のバスや路面電車が乗り放題のカードを宿で貰ったので、勘を頼りに乗ったり降りたりを繰り返して市内を巡る。そして、夕食は国境を越えてドイツでとることに決めていたので、国境までの路面電車に乗り、生まれて初めて歩いて国境を通過した。ドイツのパスポートコントロールで何しに来たと聞かれたので食べに来たと答えたらあっさりと通してくれた。とは言え観光地でも何でもないところなので、最初に入った店では英語ももちろんフランス語も通じず、ビールだけ飲んで退散し、二軒目は感じのいいウェイトレスが英語で応対してくれ、楽しく食事が出来た。ユーロで払う訳だが、スイスよりは随分安く感じて大満足である。来た道を戻るが、ホテル側まで電車で行こうとして当てずっぽうに乗った電車が途中から反対方向に向かってしまい、すぐに降りて歩いて引き返すなどして多少ロスはあったが何とか宿に戻って早めに寝る。長いと思っていた旅行もあとパリの二日間を残すのみである。