藝術センター

十二月十九日(土)晴時々雨
九時過ぎ宿を出で三条通りのポールにて朝食の後寺町通りを北上し拾翠亭に赴く。晴れ間から細雨の降る妙な天氣である。紅葉は既にないが他に客もなく暫し九條池を眺めて過ごす。

其れから再び寺町通りに戻り、末廣にて穴子寿司を食し早めの昼餉となす。再度北上、京都御苑の中を歩いて同志社大學に至る。一時より徳照館にてボリスとUさんのレクチヤー。ふたりの嗅覚に關する姿勢の違いとともに近いところもあるのが分かり面白く聞いた。質疑応答のところで中座して一足先に京都藝術センターに向かふ。中の喫茶店で珈琲を飲みながら明日締切の原稿の最終チェック。四時にT先生、それからHさんの順で現れ暫し雑談。五時に「黒髪とマドレーヌ」展の會場の四階和室に行き、Iさんにおふたりを紹介し、それからボリスの作品を見る(嗅ぐ?)。六時よりI女史による講演があり、それからUさんの今回の「作品」である「京都ラブストーリー」なるワークショップに参加。御簾越しに姫にアプローチするといふもので、最初だつたせゐもあって緊張もありどうしたらいいかも分からず撃沈の感。自分は散々であつたが他の人々はそれなりにコミユニケーシヨンを取り、全員が終はつた後の双方の感想も面白かつた。要は源氏物語の時代の男女のやり取りを今再現したらどんなことになるかといふ實檢のやうなものである。姫の方は言葉を發せず、姿も見えず、會話も侍女がとりもつといふことで、不思議とドキドキするものである。Uさんに頼まれて参加したものの、改めて自分のコミユニケーシヨン力の無さを痛感した次第である。