かをりをりのうた 7

十二月二十七日(日)晴

梅が枝の花にこづたふうぐひすの聲さへにほふ春のあけぼの
仁和寺法親王守覺〜千載和歌集

「共感覺」シリーズである。鶯の鳴く聲が嗅覚的に捉へられるといふ意匠。花を雪と見る、雪を花と見る式の視覚の「見立て」よりは氣が利いてゐるだらう。梅に鶯といふ古典的な構図は繪畫にも歌にも多いが、梅の香りと鶯の聲を倶に詠む歌は、三十一字では短すぎるのかさう多くはない。聲が匂ひ、梅の花が囀(さへづ)れば話は早い譯だが、下手をすると俳諧風になる。この歌では「こづたふ」に動きがあり、梅の花をつけた小枝を小刻みに飛び移る鶯が香りを揺り出す感じがあつて、同時に一聲あれば音色と色香が重なり合ふのもむべなるかなと思はせる巧さがある。あけぼのも地の香りがしてゐさうである。