妻妾同居

五月二十一日(日)晴
川向うの件で疑いを持たれた私は組の者から狙われている。私は用心をして家を出ない。街中のマンションの二階に妻と愛人と一緒に住んでいるのだが、二人の女性は仲がいいので助かっている。二人とも私を助けようと献身的なのだが、少々抜けているのか、生ゴミを出しに玄関の鍵をかけずに出たりして、その度に私は注意深く鍵をかける。通りに面したリビングの窓も、中を窺い見られぬようにカーテンを固く閉ざしている。愛人が組長の知り合いであることが望みの綱なのだが、それもたいして当てには出来ない。夜の十時過ぎになって、死んだ鉄砲津の伯父伯母がふたりで訪ねて来た。びっくりしてよくここが分かりましたねと言うと、住所を知っていたから訳はないと言う。私はこの時間から帰す訳には行かないと思い、妻に客用の布団は二組あるかと聞くとあるという。とりあえず玄関先の和室に入って貰うと、大垣行きの最終で帰ると言う。その時外に人影があるのに気づき、窺い見るとライフルを持ったスナイパーである。私は咄嗟に物陰に隠れるとともに皆に身を低くしろと言う。まさか私以外を撃ちはしないだろうが、大変なことになったと思っている。