TGV

三月十一日(日)
休みの日に調べものがあったので会社に行き用事を終えて帰ろうとして図書館のロビーの椅子に帽子を置いて座ると、帽子の上に座ったかと思うと立ち上がる際に帽子を手にして立ち去ろうとした男が居たので殴り倒して帽子を奪い返した。男は横になったままこちらを見ているので何度か「やるのか」と威嚇してから私は図書館の外に出た。すると嘗ての上司ですでに退職しているH氏が居て、自分のカードでは中に入れないので貸してくれという。退職しているのだから入れなくてあたり前だが何か用があるのだろうと思って貸し、すぐに戻るというので外で待つことにした。色々な人々が待ち合わせをしている。わたしはすぐ横にいる三十歳くらいのきれいな女性が気になってちらちら見ている。すると思いがけず高校時代の友人Iが現われ貸していた本を返してくれ、これから一緒にパリに戻らないかという。H氏に貸したカードが気になったが後から電話で連絡を入れることにして駅に行くと、何とIの分のTGVの予約はしてあるという。私の分の切符を取らねばならないが発車まで時間がない。何とか自動券売機で予約を始めるがフランス語の表示なので手間取っていると後ろのフランス人がイライラしたのか手伝ってくれ、最後の支払いの段になってIがクレジットカードを通らして払ってくれた。私はIが裕福なのを知っているので、それではといって出してもらうことにする。時計を見ると思っていたより発車まで時間があるのでH氏に電話を掛けようとするが、鞄の中から取り出したのは古い携帯電話でもう解約してあるから繋がる筈もない。やっと今のスマートフォンが見つかったものの電話帳に名前が見つからずに手間取る。そうこうしているうちに発車の時間になるのに電車が見えないのでおかしいなと思っていると建物の陰にすでに停車していたのに気づく。すぐに出発しそうである。家内と私は慌ててプラットフォームを走って、車掌が「早くしてください」と言う中何とか乗り込むことが出来た。しかし、乗車券を見ると席は4号車なのだが、乗ったのは3号車でしかも通り抜けが出来ない。二つ目の駅で二分停車なのでその時移ることにしてそれまで空いた席に座る。TGVの筈だが次の駅に二分ほどで着き、その次も五分で着くという。これでは山形新幹線並みだなと思っている。