驚いた事

四月十三日(金)晴
先日某大手電機メーカーのOBと話をしていて驚いた事がある。その人は海外駐在の経験もあるとのことで、その会社の駐在員は社長が出張で来る際には泊まるホテルのテレビから冷蔵庫から、とにかく電気製品をその会社製のものに取り換えるのだという。ホテル側も承知していて、事前に駐在員が電気製品を持ち込んで交換するのである。社長はそれと知らずやって来ては自社製の製品が使われていることに満足する…。こんな体質だから粉飾決算や隠蔽が起こるのだろう。呆れてものが言えない。これでは馬鹿殿珍道中ではないか。しかし、驚くべきは、この話をしてくれた方がきわめて知性の高い人であるにも拘わらず、そうした習慣に対して少しも批判的ではなく、むしろ面白いエピソードのように語っていたことである。ある組織の常識にどっぷり浸かってしまうとしまうと、その異常さに気づかなくなるのであろうか。失礼ながら技術史を研究するその人の論点や視点を少し疑わしく思えてくるような、私にとっては衝撃的な話であった。