独り言

   二日連続で、朝の電車の中で独り言を言い続ける人に出遭った。心か頭の不調な人なのだと思うが、最初の日はごく普通の30〜40代の女性が、「実戦に弱い?」「実戦に弱い?」と、延々と疑問を投げかけていた。今日は男性で、「朝は絶対ダメ」「朝は絶対ダメ」と強い勧告を行っては、訳のわからぬ叫び声(あるいは歌っているつもりか?)をあげていた。
 それでふと思ったのは、言語とはそもそも疑問や命令(禁止)から始まるのではないかということだ。それに先立つ感嘆詞を含めれば、これが言語成立の三大条件ということではないか。逆に言えば、私は人間である、といった平叙文は、言語が成り立った後の変態的な言語行為と言えなくもない。そんなわかりきったことや、客観的な叙述が、より切迫した命令や疑問に先立つ訳がないからである。頭や心の弱った人は、当然ながら平叙文を独り言で繰り返すことはなく、言語の本源に立ち戻ってことばを発しているのだ。今後もそうした独り言をコレクションして行きたいと思う。