角袖と忘年会

十二月五日(月)晴
朝通勤時東海道線の列車に遅れが出るも定時に出社。昼食後半休を取りて東京まで電車で行き、其処から徒歩日本橋三越に到る。呉服売場に行き男性用角袖を見る。安いものは十万、少し厚手のものは十五万、カシミアになると四十万程。色柄はまあまあのものもあれど決め兼ねる。其の間N子よりメールが入り三時過ぎ日本橋高島屋にて待ち合はせることにして移動。先に見てをかうと、女店員に「角袖はどこか」と聞くと半襟のところに連れて行く始末。呉服売場の店員とは思へぬ対応なり。三越の方はさすが越後屋だけあつて貧乏臭い余の如き客が角袖を見てゐても店員は誰一人寄つても来ず、金持ちらしい上得意客と優雅にソフアで商談中であつたが、高島屋はずつと庶民的らしい。やつと男物担当の店員が来て角袖の並ぶ場所に行くに、前の開いたモダンな角袖があり、しかも五万円台と格安である。ほぼそれに決めてN子の到着を待つ。やがてN子が着き試着の上薄いグレーのものに決定。予算より遙かに安ければ思はず目に入つた粋な柄の角帯も買つてしまふ。普通の角袖はどれも似た感じで、素材の違ひが値段に反映するだけで、気に入るものはなかつたが、これは安い上にオジさんくさくない色形であり、実によい買物であつた。
高島屋内の喫茶店にて一茶を喫した後地下鉄にて余は新橋で降り、N子は其の儘職場に戻る。新橋駅烏森口にて年末ジヤンボ宝くじを買ひ、山手線にて品川に移動。五時より齋藤組の忘年会に出席。参ずる者五人、皆上司に媚びることが出来ずに現経営陣から退けられた一癖も二癖もある面々である。放談とは言へ、別に恨み節もなければ愚痴もない。ただ、阿呆な連中はそれとして笑ふだけの楽しい飲み会である。八時半には散会、九時半過ぎ帰宅。