笠間往還

十二月十八日(日)晴
再び岳父の車にて早朝七時前につくし野駅まで送られ、渋谷経由山手線で上野に出で、八時半発の常磐線特急にて友部に赴く。すでに如道会の面々の姿あり。待ち受けた車数台に分乗してまず神家所有の鍛冶倉農園に行く。落成間近の仮称笠間山荘を見学す。凝つた創りの日本家屋にて、建材の木目の美しさや細かい造作を見れば設計者のみならず施工業者の注力の程が推し量らる。神家の私的な山荘であるとともに、三十畳の多目的広間の他如道会等の会員同志の交流の場としての役割を果たすものなれば、夏の例会や冬の納会の折にこの山荘を皆で訪ねる楽しみを思ひて他人事ならぬ喜びを感ず。広い農園内の景色も素晴らしく、寒い一日ながら陽光の温かみを感じつつ散策し、十一時にカフエ・ワスガゼンに移動、軽い昼食を取つた後笠間芸術の森にあるクラフトホールにて如道会納会の演奏を行ふ。余は十一番目にW君と二管にて布袋軒鈴慕を吹く。始まる前の音出しの際はまるで音が出ず、今日は駄目かと思つたが本番では思つたより音が出たので一安心。細かいところや音の正確さはともかく、それなりに良い音が出てゐたと後から先輩諸兄に褒められ嬉しくなる。演奏を終へ歩いて再びワスガゼンに行き四時から懇親会。寒い中テラスで焼酎お湯割りや熱燗を飲みつつ、いつもながら実に旨い料理を食べ諸先輩や後輩らと歓談。メヒカリといふ魚を初めて食するに極めて美味也。五時半辞して車にて友部まで送られ、五時五十分発の常磐線普通電車にて帰路に就く。同道はМ先輩とS先輩。七時過ぎ柏着。柏在住のS先輩に誘はれ駅前の居酒屋でM先輩と三人で八時半まで軽く飲む。M先輩より竹号に纏はる秘話を聞く。また、M先輩は結婚の際如道会有志より結婚祝ひに何が欲しいかと聞かれて長火鉢を所望した話など面白く聞く。流石に尺八を吹くだけあつて、昔から渋いものを欲しがつたものである。柏より再び常磐線に乗り日暮里で京浜東北に乗り換へ、途中熟睡して到着は十一時前。楽しい一日であつた。