滋賀の方

三月五日(月)雨後陰
如道忌翌日恒例の神家ご一行による京都近江巡りに参加するため、八時半に通りを挟んだ反対側の新・都ホテルに赴く。神先生の姿既にあり。Kさん運転のジヤグウアーに神先生とN子と余が乗り込む。まずは大徳寺に向かひ、大仙院に行く。総勢二十名にて団体扱ひなれば僧形の案内がつく。余の好む枯山水の雨に濡れた石を愉しむ。抹茶を喫した後、雨でもあり他は寄らずに昼食の店に行くこととする。本日のメインとも言ふべきご馳走の待ち受ける店なるも、人に知られたくなければ場所名前は記さず。十一時半に到着し、近くの明王院にて献奏を為す。大和樂、無住心曲、虚空、布袋軒三谷を吹くも、他の方々は暗譜なれど余は大和樂以外は暗譜もしてをらず譜面もなく、極めてたどたどしき演奏となる。恥ずる気持強し。其れから店に戻つて昼餐である。献立は下記の如し。余は最初に熱燗、鍋からは冷酒を呑む。料理と酒の美味なること筆舌に尽し難し。

先付け 鯉の白子蒸し
子持ち鮎のなれずし
お造り 鹿 鯉 岩魚 
焼物 本もろこ 塩焼き
ぼたん鍋 〆に饂飩
ご飯 みそ汁 香の物
デザート




冷酒は新潟の鮎正宗を冷えた竹筒に入れたもの。冴え冴えとしたキレがあり気に入る。猪肉はたまに出す店はあれど、臭みを消す為に大抵は味噌鍋なり。然るに此処では淡口の上品なだし汁にて野菜もまた実に旨し。脂身も味はひ有り。余は二度目なれどN子も絶賛の絶品也。店を出るに雨後の山並み正に山水画の世界也。

腹を満たし酒も回つてうとうとしつつ帰りの車に揺られ、京都駅に帰り着いて四時半過ぎの新幹線にて帰浜。よく呑みよく食べよく吹いた、実に贅沢な旅であつた。