桜のあと

四月十七日(火)陰時々雨
朝晩歩を進める際に今までならぱつと明るいさくら色の梢にと目先が上向きになるのを、桜が散りはじめていつもとほりの目線に戾つてみると、木々の足もとにはいつの間にか雑草やら春の野花が咲き誇り、おやと思つて見廻せば桜の他の樹木もすつかり葉をつけ始めてゐる。春は深まり初夏といふことばがふさはしい気候になるはずの処、どうもはつきりしない天気が続きいまだに朝晩は肌寒さを感ずる。晝間はずつと会社の中に居て外に出ないせゐもあらうが、春の暖かみを存分に味はひ盡してをらぬ憾みがある。とは言へ、花粉症の薬を止めたからかいつもの春の不調もたいして酷くはなく、頭痛も起こらずに済んでゐるのはやはり妻の健康管理のお蔭であらう。食べること、食べるものの大切さを自覚して久しいが、それでもきちんと食べられてゐるのは家人あつてのことである。独身であればどうしても面倒になつて食事の吟味や準備が疎かになりがちだが、今は何もせずともきちんとした食事が用意されてゐるのであるから、これ程有難いことはない。初夏を待ち侘びる、ますば穏やかな晩春の日々を送るといつたところであらう。