細川と夢顔

細川護貞座談』読了。割にものの分かる人だつたやうだ。少なくとも息子の護煕よりは余程学問も芸術も分かる人のやうに思ふ。近衞文麿は岳父に当り、戦中其の秘書官等を務めたが、戦後は潔く政治の世界から身を引いて文と美の世界に遊んだのも、狩野直喜仕込みの漢学、特に儒学易経の素養があつたからかも知れぬ。矢張り中國の古典は読んでをくものだとつくづく思ふ。幽斎や其の子孫の話も面白いが、余には義兄になる近衞文隆との思ひ出話が特に興味深かつた。文隆がシベリアで死んだために、護貞の次男、護煕の弟が近衞家に養子に入る訳だが、此れを読んで文隆其の人への関心が高まり、買つてあつた『夢顔さんによろしく』といふ奇妙なタイトルの本を読む気になつた。夢顔のいきさつも此の『細川護貞座談』で初めて知る。『細川日記』も読んでみやうと思ふ